日本人だけが他人を引きずり下ろす?

 

学術実験で見えた意外な本性

「なぜ日本経済はこんなにも長期停滞から抜け出せないのか?」
様々な解釈がありますが、最近ユニークな視点が提示されました。 それは少々デリケートなテーマである**「国民性」**です。 経済評論家の加谷珪一氏は、日本人に特有の心理的傾向が経済を左右していると指摘します。その核心となるのが スパイト(spite)行動=『自分が損をしてでも相手をもっと損させる行為』 です。


📌 スパイト行動とは?

学術的に定義された概念であり、公共財ゲームのような場面でよく観察されます。
例えば、投資すれば自分にも利益があるが、投資しない相手もその恩恵を受ける――。このとき、

  • 「自分が得をするのだから投資する」と考える人

  • 「相手がタダ乗りするのは許せない。自分が損しても相手をもっと損させたい」と考える人

後者の行動がまさに スパイト行動 です。


📊 日本・米国・中国の比較実験

大阪大学社会経済研究所の西條辰義教授(現・高知工科大学特任教授)らは、日本人、米国人、中国人を対象に公共財ゲームを実施しました。その結果、日本人は相手のフリーライドを強く嫌い、相手を引きずり下ろそうとする傾向が際立っていた ことが判明しました。

さらに興味深いのは、実験を繰り返すうちに「引きずり下ろす行為」が一種の制裁として機能し、徐々に協力的な行動が増えていった点です。つまり、日本人は他人を制裁する一方、その制裁を恐れて自らも協力的になるという二面性を示したのです。


🏢 日本社会とのつながり

この実験結果は、日本社会の特徴をよく表しています。

  • 会社文化:上司や組織に過剰な忠誠を誓う態度

  • 長時間労働やサービス残業:監視や制裁を恐れた結果の「協力」

  • 集団の秩序維持:他人を引きずり下ろす行為が恐怖を生み、それが組織秩序へと転化

つまり、日本の社会秩序は 「監視と制裁 → 協力と忠誠」 という循環で維持されていると分析できます。


💡 筆者の考え

この記事を読んで思ったのは、「これは日本だけの問題だろうか?」という点です。実は韓国や他の社会でも、「自分が損しても他人の成功は許せない」 という心理が顔を出すことがあります。

短期的には秩序を保つ効果があるかもしれませんが、長期的には 革新や挑戦を抑圧し、経済や社会の停滞を招く 可能性が高いでしょう。日本経済の長期低迷を国民性と結びつける議論は、決して軽視できない示唆を含んでいます。

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